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平野 憲一:株価は「米中対立の激化」で逆に反転する? 相場が上昇する「きっかけ」となるのは何か

今週発表される5月のISM景況指数(製造業は3日、非製造業は5日)や同雇用統計(7日)は、(対中制裁関税の)第1弾と第2弾の影響と、4弾、5弾の駆け込み需要がまじりあっての数字だが、もし、この条件で厳しい結果が出たら、国内の「関税強化反対論」が急速に高まるだろう。「大統領選挙に勝つ」という究極の目的があるトランプ大統領にとっては許容できるものではない。このことが、米中対立沈静化へのきっかけになるという見方もある。

 

また、最近中国側の発言に、「国家の尊厳を守る」や、「アメリカは経済テロリスト」等という、大仰な表現が目立ち、対立の長期化を予想する声が大きくなっている。だが、それは逆に、アメリカの圧力が中国の本丸に迫っている証左ではないか。

 

もし中国側が国家の尊厳(社会主義体制)に踏み込まれることを避け、貿易問題だけで処理しようと考えたら、プラザ合意の要求をすべて飲んだ日本の例(1985年)に則り、元高(元安ではない)や、対米貿易黒字解消を大幅譲歩で乗り切ることを選択しまいか。これも対立沈静化へ急傾斜するかもしれないと考える理由の一つだ。

 

残念ながら、筆者が期待した反発のきっかけは、現在のところ、ことごとく不発に終わっている。それは、主に以下の3つの理由による。

①10連休明けに発表された企業業績:日経平均予想EPS(1株益)は5月16日に1782円と、過去最高値1794円に迫ったが、5月31日現在1771円と伸び悩み、結局「それほど悪くはないが、期待したほど良くもなかった」とされた② 5月10日の、マイナス0.2%程度とされていた1~3月GDP成長率速報値は、予想外のプラス2.1%。設備投資・個人消費・輸入の「内需3羽ガラス」がすべてマイナスだったにもかかわらず「消費税凍結」の話に至らなかった③5月24日の5月の月例経済報告。総括判断は2カ月ぶりに下方修正したが、「景気は緩やかに回復している」との認識は維持され、これも反発のきっかけにはならなかった。

 

市場には「陰の極」と言われる複数の底入れ現象も起きている。例えば裁定残高は買い3億5939万株、売り2億9557万株、差し引き6382万株(5月29日現在)となっているが、買い残の中には配当の再投資買い残約8000億円が含まれていると推定され、実質はマイナス状態だ。

この現象は陰の極となった昨年12月安値にも起きたが、頻繁に現れるものではない。また5月27日には東証1部売買代金が4年5カ月ぶりの1兆4000億円台という超閑散だった。下落相場の過程で極端に取引量が減少する状態も陰の極を指すとされ、相場反転のきっかけになる例も多い。

今週の米景気指標以外で、今後反転の材料になりそうなものはあるのか。一気に衆院解散になるかもしれない6月19日の党首討論も候補の一つだ。また、もちろん6月28・29日のG20も、首脳会談で米中対立がひとまず収束するかもしれない大イベントと考えられる。ただこれらまでしばし時間があり、我慢が続きそうだ。

以上のことを勘案、今週の日経平均株価予想レンジは2万0300円~2万0900円とする。

 

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